| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-294 (Poster presentation)

滋賀県の水田地帯におけるゲンゴロウ類2種の越冬生態

*横山大輔(大阪府大・農生),向井康夫(東北大・生命)

温帯地域に生息する昆虫にとって、越冬様式は最も重要な生活史戦略の一つである。昆虫の越冬に関しては室内や準野外の実験で休眠性や耐寒性などの生理的な研究が多くなされている。しかし、昆虫の季節適応を考える上で必要である野外での越冬様式や、越冬成功個体の割合などの基礎的な報告は十分ではない。本研究では、滋賀県高島市マキノ町の水田に隣接した2本の素掘りの水路で、成虫越冬を行う止水性のゲンゴロウ類を対象に、野外越冬個体の調査を行った。

調査は2010年10月から2011年6月に合計22回、予備調査で個体数が多かったヒメゲンゴロウ(以下ヒメ)とクロゲンゴロウ(以下クロ)を対象として標識再捕獲法を用いて行った。この水路は湧水の流れ込みにより、冬季にも涸れることはなかった。

調査方法に先立ち、各水路を等間隔に区分した。毎調査では各区間内の全域を掬い取る採集を行い、採集個体の前翅にミニルーターを用いて個体識別用の番号を記入した。標識を施した個体は種名、個体番号、雌雄を記録後ただちに同じ区間に放逐した。標識個体が再捕獲された場合は、個体番号を記録し放逐した。越冬場所の環境条件として、気温と水路の各区間の水温をデータロガーを利用して2時間毎に記録した。積雪前に標識した個体のうち、4月以降に再捕獲された個体の割合を越冬成功個体とした。なお積雪は2010年12月17日から2011年3月18日まで継続的に見られた。

結果、積雪前の標識数はヒメ1139個体、クロ165個体で、越冬成功個体はそれぞれ約20%、約50%を占めた。本発表では、各種個体の水路内での分布パターンと温度条件との関係および、越冬中の水路内の移動について報告する。


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