| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-295 (Poster presentation)

ツキノワグマの骨形態の特徴

*中村幸子,横山真弓(兵庫県立大),斎田栄里奈(兵庫県森林動物研究センター),森光由樹(兵庫県立大)

近年兵庫県およびその近隣県で捕殺されたツキノワグマにおいて、骨に重篤な異常を持つ個体が高確率で確認されている(横山ら、2012など)。本病変を分析するにあたって、ツキノワグマの骨に関する基礎情報が不可欠である。本研究では、兵庫県とその近隣県で捕殺された成獣ツキノワグマ118頭(東中国個体群60頭、北近畿個体群58頭)および岩手県内にて捕殺された成獣ツキノワグマ13頭を用い、脊椎数とその基本形態の特徴を示した。

ツキノワグマの脊椎数は、頚椎が7、胸椎が14、腰椎が6が基本であった。しかし腰椎数不足(4または5椎)を示す個体が14頭確認され、これらは全て東中国個体群の個体であった。また胸椎15、腰椎5を示す個体が3頭確認され、これらは岩手県個体であった。また、第一腰椎の横突起の伸長・先端部の鋭角化を示す個体が東中国個体群で2頭、北近畿個体群で15頭、岩手県で2頭確認された。さらにこれらのうち東中国個体群1頭、北近畿個体群5頭、岩手県2頭では横突起と椎体の分離、または分離はしていないものの横突起と椎体間に間隙が確認された。

今回岩手県の個体についてはサンプル数の問題から、個体群間比較をすることができなかったが、上記の胸椎・腰椎の数・形態の違いを示す割合は捕獲地域ごとに偏りがあったことから、ツキノワグマにおいて骨形態は、地域個体群間で異なる特徴を持つ可能性が高いことが示唆された。


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