| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-399 (Poster presentation)

小規模自治体におけるレッドデータブック作成事例

白川勝信(高原の自然館)

北広島町(人口約2万人)が作成した「北広島町レッドデータブック2012(RDB)」について,その作成過程および利用・管理の展望を報告する.

生物多様性基本法の施行以来,各地方自治体においても生物多様性地域戦略の策定が進められている.戦略策定の動きが特徴的なのは,都道府県や政令指定都市のような,規模の大きな自治体だけでなく,財政や人口の規模が小さな基礎自治体においても早い段階からの取り組みが見られることである.その背景には,環境省の支援事業やCBD-COP10の開催など,地方自治体が取り組みやすい状況が整った事も要因であるが,「戦略の策定」が,例えば「農村振興計画」や「文化財管理保護計画」のように,自治体の事業として馴染みやすいことが大きかったと考えられる.

一方で,生態系に関する情報の整備については,「一部の例外」を除いてモニタリングの体制が整っていないため,多くの基礎自治体では,戦略の策定が困難なことや,策定された戦略が形骸化することが予測される.生物多様性を保全する上で,基礎自治体による取り組みが欠かせないが,全ての基礎自治体がモニタリングの体制を整えるには,いくつものハードルを越える必要があり,既存の生物情報を活用するための「効率的な」方法が求められる.

北広島町は,過去からの調査記録が蓄積されていることや,小規模ながら博物館施設を有していることなどから,基礎自治体としては比較的モニタリング体制が整っている「一部の例外」に含まれる.しかしながら,人的・物的資源は限られており,生物情報の「効率的な」活用方法が求められるという課題は他の自治体と共通である.北広島町でのRDB作成事例を通して,生物多様性情報を基礎自治体の施策に反映させる際の課題や,科学的正確さと現実社会との折り合いについて考えたい.


日本生態学会