| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-419 (Poster presentation)

水稲栽培における農法履歴の違いが水田の植物種多様性に及ぼす影響-不耕起V溝直播農法に着目して

*伊藤浩二, 中村浩二(金沢大・環日本海域環境研究セ)

水稲の不耕起V溝乾田直播農法(以降、V直)は、経営規模の拡大に対応した省力技術として、東海・北陸・東北地方の農業法人や担い手農家を中心に普及が進んでいる。これまで著者らの報告によりV直の水田雑草の種組成は、近隣の慣行水田と比較して乾田化により減少している希少湿生植物種が多い等の特色があることがわかってきた。一方で、現場におけるV直の導入は特定の圃場に固定的ではなく、水もちや雑草の生え方などの圃場特性を見極めながら、慣行栽培や転作大豆との入れ替えが起きている。農法の入れ替りは生産期間中の雑草群落組成に影響を与えるのみならず、埋土種子や栄養繁殖体を通じて農法入れ替え後の種組成にも影響する可能性がある。そこで農法変遷パターンと雑草群落に関係性が認められるかを明らかにするため、石川県珠洲市N地区において、過去2年間の同地区内の水田圃場単位での作付内容の変遷について農業法人から聞き取りを行い、パターン①:2年連続V直、パターン②:2年連続慣行(移植)、パターン③:転作大豆からV直に変化、を含む5つのパターンを見出した。そのうち調査可能だった上記3つのパターンをたどった水田を対象に、収穫直前の2012年9月下旬に併せて20圃場において植生調査を行い、種組成の特徴を明らかにした。

INSPANの結果、パターン①においてオオクサキビ、ヤナギタデが、パターン②でイヌホタルイ、タケトアゼナ、タマガヤツリが指標種として見出された一方で、パターン③では指標種は認められなかった。また、これまでV直水田に特徴的だったミズオオバコやキクモといった希少湿生植物は移植水田内にもわずかに出現することが分かったが、代かき時に均平とならずに窪地になった部分に限定的であった。


日本生態学会