| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-428 (Poster presentation)

熱帯林における林道建設が生態系機能に与える影響―フン虫の事例

*保坂哲朗(首都大・都市環境),新納雅裕,山田俊弘,奥田敏統(広島大・総合科学)

木材搬出道や基幹林道、山土場など(以下まとめて林道)の建設による森林環境のかく乱は、択伐が熱帯林生態系に与えるインパクトの中でも大きなものの一つである。著者らはこれまでの研究で、これらの林道建設が森林依存性の動物群集に大きな影響を与えることを、食糞性コガネムシ類を例に明らかにしてきた。生物相の変化はそれが持つ生態系機能の変化につながる可能性がある。そこで本研究では、林道建設による食糞性コガネムシ類の群集構造の変化が生態系機能(フンの埋設による養分循環機能や土壌耕起機能とフン内種子の二次散布機能)にどのような影響を及ぼすのか明らかにするため、半島マレーシアの生産林において、森林内と搬出道上、基幹林道上、山土場上にて、フンの埋設速度およびフン内種子(疑似種子としてプラスチック製のビーズを使用)の散布距離について調査を行った。

設置48時間後のフンの消失率は、林内>搬出道>基幹林道>山土場とかく乱規模が大きくなるほど低下する傾向があり、フン虫のアバンダンスの減少と一致した。一方、ビーズの埋設深度は山土場において他のサイトよりも大きくなった。これは、フンを深く埋める大型トンネラーの相対アバンダンスが山土場において高いためであると考えられる。一方、フンに混ぜたビーズの平均運搬距離はサイト間に有意な差はなかったものの、50cm以上運ばれたビーズの割合は林内で有意に高かった。これは、フンの運搬能力の高い大型ローラー種の個体数密度が林外では大きく低下するためであると思われる。

以上より、林道建設による熱帯林のかく乱はフン虫群集の変化を通し、フン虫のもつ生態系機能の変化につながる可能性が示された。


日本生態学会