| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-432 (Poster presentation)

遊牧における寛容戦略の効用と進化

*佐藤恵里子(同志社大・文情),山村則男(同志社大・文情)

モンゴルの遊牧民には旅人のような突然の訪問者でも、ゲルに招き入れてもてなすというしきたりがある。日本では顔見知りではない、突然やってきた客を家に招き入れることはほぼないだろう。モンゴルの遊牧民はなぜこのような寛容な対応をするようになったのだろうか?遊牧民が寛容戦略をとることでどのような効用があり、寛容戦略はどうして進化することができたのか、数理モデルで明らかにしたい。日本とモンゴルの牧畜を比較すると、日本は定住型でモンゴルは移動型である。日本の国土は狭く、降水量が多く、草が充分成長する環境なので定住型が適している。モンゴルは逆に、国土が広大で降水量の変動も大きいため、移動型の遊牧が適している。このことから、広い国土をもつモンゴルの自然環境とそこで飼育される家畜に着目し、数理モデルを構築した。はじめに、モンゴルの遊牧を理解するために、環境変動の大きさとそこで飼育できる家畜数の関係について数理モデルで明らかにする。次に、環境変動の大きさをさまざまに変化させたとき、遊牧民が隣の遊牧民の家族と自分のなわばりにある好適環境の土地を共有する場合と、隣の遊牧民を排除した場合に得られる効用を比較する。つまり、遊牧民のとる戦略として、他を寄せ付けない厳格な戦略と相手を受け入れる寛容な戦略の2つを比較し、環境変動の大小と遊牧民のとる戦略の効用がどのように関係しているのかを示す。最後に2次元の格子空間上で厳格な戦略や寛容な戦略をとる遊牧民を配置した場合に遊牧民が得る効用を計算し、高い効用を持つ戦略が次世代に広がっていくという進化ダイナミクスの計算機シミュレーションを行う。遊牧民同士の付き合いは囚人のジレンマ型になっているので、効用の計算には囚人のジレンマゲームの枠組みを用いる。


日本生態学会