| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-446 (Poster presentation)

状態空間モデルによるアライグマの個体数推定と農作物被害モデルの構築

*栗山武夫,長田穣(東大・農),浅田正彦(千葉県生物多様性セ),宮下直(東大・農)

アライグマは北米原産の外来中型哺乳類で、在来生物への捕食による影響や、人家や寺社への侵入、人獣共通感染症の媒介や農作物被害など様々な問題を起こし、現在、特定外来生物として捕獲事業が進められている。本研究で対象地とした千葉県は、1990年代に野外での個体目撃情報が複数あり、1996年代に房総半島南東部(御宿町)で初めて自然繁殖が確認されて以降、全県へと分布が拡大していった。2003年頃からは農作物被害が発生し、有害獣捕獲が開始され、2009年度は狩猟と有害獣捕獲あわせて1111頭が捕獲された。アライグマの農作物被害を軽減させるためには、各地域の許容生息密度を推定し、管理目標を設定することが重要である。さらに、農地周辺の景観構造が地域によって均一ではないため、生息密度と被害程度の関係が局所的に異なることが予想される。

そこで本研究では、アライグマの被害許容密度を、農地周辺の景観構造から1㎞四方で空間明示的に予測することを目的に、まず①個体群動態を明示的に扱った状態空間モデルを用いて個体数推定を行い、②推定された個体数と景観構造を独立変数とした(順序)ロジスティック回帰を行うことで被害程度との関係を明らかにした。①の状態空間モデルは、県内の捕獲事業による捕獲効率(CPUE)をもとに構築し、市町村単位で生息密度を算出した。②の被害予測モデルの応答変数とした農作物の被害程度(4段階)は、千葉県が2010-2011年に全県の農家を対象に実施した「野生獣の生息状況・農作物被害状況アンケート調査」の結果を使用した。被害地域周辺の景観構造は、森林・耕作地・耕作放棄・市街地・河川面積等を用いた。


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