| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-453 (Poster presentation)

生物多様性の高いため池群に侵入した侵略的外来種ウシガエル個体群に対する排除の効果

*西原昇吾(東大・農学生命科学),佐藤良平(久保川イーハトーブ自然再生研究所),須田真一(東大・農学生命科学),千坂嵃峰(久保川イーハトーブ自然再生研究所),鷲谷いづみ(東大・農学生命科学)

侵略的外来種の侵入は淡水生態系の生物多様性を低下させる複合的な要因の1つである。淡水生態系の生物多様性を保全するためには、侵略的外来種の生物間相互作用を考慮した計画的かつ早期の排除が重要となる。しかし、生物多様性の高い地域へ侵入した侵略的外来種の初期段階における排除が侵略的外来種の個体群の減少に及ぼす効果についての研究例は少ない。

本研究では、生物多様性の高いため池群に侵入したウシガエル個体群に排除が及ぼす効果について明らかにすることを目的とした。

岩手県南部の丘陵地に位置する久保川流域には、生物多様性の高い600以上のため池が残存するが、2005年頃からオオクチバス、アメリカザリガニ、ウシガエルが侵入し、中でもウシガエルは急速に分布を拡大している。そのため、2009年に設立された「久保川イーハトーブ自然再生協議会」による自然再生事業として、ため池群におけるウシガエルの排除が2010年より本格的に開始された。生物多様性の高い120の池でもんどり型トラップ600個を設置し、地域と協働で4月~12月の毎週の排除が実施された。その結果、ウシガエル幼生50343頭、成体♂1266頭、成体♀1180頭、新成体7183頭、卵塊12個が3年間で捕獲された。中でも、保全上重要な水生生物が残存するため、集中して排除を実施した、侵入の最前線となる地域では、個体群の大幅な縮小がみられた。

以上より、生物多様性の高いため池群における早期からの集中的なウシガエル排除は、ウシガエルの局所個体群の減少に効果を及ぼす可能性が示唆された。今後、保全上重要な地域における排除の継続の効果が期待される。


日本生態学会