| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-454 (Poster presentation)

上高地における外来植物の侵入と分布

*渡邉修,松本壮平(信大農),村上靖典,松尾野里子(環境省)

本研究は中部山岳国立公園の上高地公園内に侵入した外来植物の詳細な分布域を明らかにするために行われた。GPSカメラのEXIFファイルの緯度経度情報は,写真同定が容易で植物標本を集めにくいエリアでの簡易分布調査を行うときに有用である。2012年に外来植物の調査を大正池から横尾の範囲で実施した結果,12科40種の分布を確認した。エゾノギシギシ,カモガヤ,シロツメクサ,ムラサキツメクサ,ナガハグサなど草地雑草が多く確認された。上高地では1884年から1934年の間に徳沢周辺で牧畜が行われており,草地雑草が多い理由の一つと考えられた。また,ヒメジョオン,メマツヨイグサなど荒地の雑草も多く確認された。大正池,ウエストン園地,河童橋周辺において,高い密度で外来植物が確認され,エゾノギシギシ,ヒメジョオン,シロツメクサ,ムラサキツメクサ,セイヨウタンポポ,オランダミミナグサ,カモガヤは横尾まで分布していた。生態系や生物多様性に極めて大きな影響を及ぼす特定外来種のオオハンゴンソウ,要注意外来種のハリエンジュ,イタチハギ,オオアワダチソウ,コセンダングサなどが大正池周辺で確認されたが,発生地点数は少なく,分布域は限定されていた。分布が集中するエリアを固定カーネル法(h=100m)で推定したところ,ウエストン園地と河童橋周辺でエゾノギシギシの集中班が7つ確認され,集中班の合計面積は0.37km2であった。分布が集中するエリアと固定カーネル法による観測密度50%範囲は地図上でよく一致した。

GPSポイントデータは外来植物の今後の分布拡大を評価するためのデータベースを構築するために有用である。特定外来生物の侵入や拡大防止に向けた上高地地域の保全活動を進めるために,継続的なモニタリングが必要である。


日本生態学会