| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S06-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

黄砂発生源としての草原:ユーラシアの真中で考えた

篠田雅人(鳥取大)

ユーラシア大陸の温帯草原はハンガリーから北東中国まで東西に広がり、南の砂漠地帯に隣接している。温帯草原では、近年、気候の乾燥化や人為的インパクトにより砂漠化が進行しているが、このプロセスは風食と深くかかわり、日本への黄砂飛来の増加との関係についても指摘されている。黄砂が日本に飛来するまでの過程は、発生、輸送、沈着に大きく分けられるが、正確な飛来予測のためには、発生過程の十分な理解が不可欠である。従来、黄砂発生研究は砂漠地域を中心としていたが、砂漠化が進行する植生地域も研究の重要性が高まってきた。「春の枯れ草や土壌水分が黄砂 (ダスト) 発生にどう影響するか」という疑問に答えるため、日蒙米独共同プロジェクト、ダスト-植生相互作用観測が行われている。黄砂発生の起こりやすさは、黄砂が舞い上がり始める風速 (臨界風速) で指標化することができる。黄砂発生の臨界風速と地表面状態の関係から、黄砂発生の起こりやすさの分布図 (黄砂ハザードマップ) を作成し、最終的には、このハザードマップと天気 (風速) の短期予報を組み合わせて、黄砂発生リスクの評価が可能となる。温帯草原を支える土壌は肥沃ではあるが、その多くはシルト質の氷河性レス(風成塵)を母材としているため、植生が失われると侵食に脆く、それを基盤とする乾燥地農業、遊牧などの生業は危機に瀕する。このような背景から、生態過程と風食過程を統合したモデルを構築し、モンゴル草原においてここ10年ほど蓄積してきた現地観測データ(地表面状態・風食)を用いて統合モデルの検証を行い、草原の持続性評価を行っている。


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