| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S12-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

環境攪乱下において短距離拡散が有利になる条件について:コロニー成長におけるコロニーの分割比と分散距離のトレードオフを焦点に

中丸麻由子(東工大)

生物では、親と子が同じ場所に留まる場合もあれば、親とは異なる場所へ子を拡散させる場合もある。環境撹乱下ではリスク回避のために拡散が進化的に有利であるという。しかし一部の生物では、環境撹乱下であっても非拡散である。では、非拡散が進化する条件は何であろうか。コロニーを単位とする定着型生物は環境撹乱下においても非拡散であり、コロニーを分割させて親コロニーと子コロニーに分かれ、親コロニーの近くに定着する。一方、拡散する生物は少数個体で拡散する場合が多い。そこでコロニーサイズを4種類にわけ、サイズを成長させ、最大のサイズ(サイズ4)になると分割するとした。分割比として2:2分割戦略(コロニー分割後の親と子コロニーのサイズがほぼ変わらない)と1:3分割戦略(親子のサイズ差が大きい)の2つの戦略を仮定した。

基本モデルではコロニー間の闘争は無く、場所を巡る競争のみとし、コロニーサイズ依存の死亡率を仮定した。死亡を免れると、すぐに次のコロニーサイズへ推移するとした。小さなコロニーの死亡率が他のコロニーサイズの死亡率と比べて非常に高い時は2:2分割戦略が有利になり、撹乱頻度の高い環境においても有利になるという結果となった。

次に、コロニーが死亡を免れてもすぐには成長せずに同じサイズの状態のままである確率を導入した。すると小コロニーの成長が他のサイズに比べて非常に遅い時に、2:2分割戦略が有利になる事を示した。

3つ目に、分巣先に既にコロニーがある場合に場所を巡ってコロニー間闘争が生じる場合と基本モデルを比較し、基本モデルのほうが2:2分割戦略にとって有利になる事を示した。

よって、シンプルな基本モデルを基にして、様々な現実的な仮定と非拡散のコロニーが有利になる条件との関係を明らかにした。


日本生態学会