| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
企画集会 T07-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
地球温暖化や狩猟・漁業、生息地改変などの人間活動は、生物の環境や生物間の相互作用を大きく変化させる。近年、このような大きな生態学的な変化に対して、生物が短いタイムスケールで急速に進化させることが数多く報告されている。さらに、生態学的な相互作用の変化によって引き起こされた急速な進化的変化は、逆に生態学的な相互作用に影響を与えるだろう。実際、個体群動態や群集構造、食物網など様々なレベルの生態学的相互作用が、急速な進化―生態学的フィードバックの影響を受けていることが最近の研究で明らかにされつつある。
外来生物は原産地と異なった物理的・生物的環境を経験しているため、侵入先で様々な形質を急速に進化させていることが報告されている。一方で、その急速な進化が、生態学的な相互作用に対してどのような影響を与えているかはほとんど検証されていなかった。本講演では、外来生物における急速な進化―生態フィードバックのケーススタディとして、我々が行なっているブタクサとブタクサハムシの系を紹介したい。この研究でわれわれは、天敵がいない環境に侵入した外来植物がどのように防御戦略を急速に変化させてきたかを調べてきた。さらにこのような防御戦略の急速な変化が、植食性昆虫の生態学的相互作用、特に食草利用パターンに影響を与えうることがわかってきた。最後に、進化―生態フィードバック研究における外来生物の有用性と、外来生物管理において進化―生態フィードバックを認識することの重要性について議論したい。