| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T07-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

理論的アプローチから生態-進化フィードバックを解き明かす

*山道真人(コーネル大)

伝統的な理論生態学では、しばしば生態と進化の時間スケールが異なると仮定し、個体数の変動と遺伝子頻度の変化を切り離して考えてきた。これはモデル解析を容易にするうえでも役に立つ仮定であったが、近年の実証研究によって進化が迅速に起こりうるという点が明らかになってきたため、両者の変動を同じ時間スケールで考慮する必要が出てきた。

本発表では、理論的アプローチが生態と進化のフィードバックを解き明かすことに貢献した研究の例として、プランクトンの捕食者—被食者個体群動態を挙げる。コーネル大学の研究グループでは、理論生態学者と実験生態学者が協力し、被食者における対補食防御形質の迅速な進化が個体群動態に与える影響を、十数年に渡って研究してきた。彼らは決定論的な微分方程式による動態の予測だけでなく、複数のメカニズムからもっともよく実験データを説明できるものを選び出す統計的解析も行った。さらに、生態と進化が個体数変動に及ぼす影響を定量化する手法を開発した。この手法はプランクトン以外のさまざまな系に対してもちいられ、迅速な進化の相対的な重要性を検出するために役立っている。これらの研究の歴史を振り返った後、今後の生態—進化フィードバック研究において、理論研究と統計的手法が果たす役割について考えてみたい。


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