| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
企画集会 T09-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
キツツキは繁殖やねぐらをとるためにほぼ正円形の入口を持つ穴を樹木につくる。また、キツツキは体サイズによって大小異なるサイズの穴を腐朽などの状態が異なる樹木につくりだす。樹木にできたこのようなキツツキの穴や菌類の腐朽作用によってできる多様な形状の樹洞とよばれる空間は、森に棲む動物の棲み家として不可欠な空間資源であることが知られている。樹洞を利用する動物は、鳥類や哺乳類・両生類・爬虫類・昆虫と多岐に渡り、営巣やねぐら、隠れ場所、休息場所、採食活動に樹洞を利用する。そのなかで自ら樹洞をつくる動物はキツツキなどのごく一部に限られ、多くの動物は自ら樹洞をつくれず既存の樹洞を二次的に利用する。そのため樹洞をつくるキツツキは、二次的に樹洞を利用する動物の生息や行動に影響を与えている。本発表では、キツツキによる樹洞の構築やその利用可能性について、また実際にどのような動物によって利用されているのか、これまでの事例をもとに紹介する。
さらに、キツツキ(一次樹洞生産者)と既存の樹洞を利用する動物(二次樹洞利用者)は、樹洞の供給と利用を通して相互に関係し合いネットワーク(ネストウェッブ)を形成する。これら二者の相互関係は森林環境によって変わるものと考えられるが、単純に利用者の体サイズと樹洞サイズの関係で特徴付けられたり、あるいは二次利用者の積極的な樹洞の乗っ取り行動や泥や樹液を用いた樹洞のリフォームによって特徴付けられたりする。本発表では、北海道の針広混交林で樹洞利用を調査した結果や先行研究から、これらの地域におけるキツツキとキツツキの樹洞を利用する動物との相互関係について特徴を考察したい。