| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T16-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

陸域の生態系サービス(供給・調整)のための基盤情報整備について

三枝信子(国環研)

生態系が人間社会にもたらす公益的機能(生態系サービス)は多岐にわたっており、複数の生態系サービスが相互に補い合う関係にある場合もあれば、一つをとると他のサービスが損なわれるという関係(トレードオフ)にある場合もある。例えば、気候変動の緩和を目的として森林による大気中二酸化炭素吸収能力の強化をはかる活動を進めることは、森林面積の減少をくい止め植林を促すことによって、大気質の調整サービスと林産物の供給サービスの向上を同時にはかることが可能である。一方、天然林の伐採と人工林の拡大は、生物多様性保全に関わる生態系サービスを損なうおそれがある。

変動する気候下にあるアジア太平洋地域の生態系に対し、各種の生態系サービス間の相補またはトレードオフの関係を適切に評価する手法を確立することは、気候変動への適応と生物多様性保全の両立をはかる各種の対策を検討しその効果を監視する上で必要不可欠の課題である。本講演では、アジア太平洋地域の陸域生態系の気候調整サービスとバイオマス供給サービスの定量化に焦点を当て、近年普及しつつある陸域生態系の各種観測ネットワークとデータベースに基づいて生態系の二酸化炭素吸収(放出)機能の変化と地上バイオマスの変化をモニタリングする手法の確立に向けた研究の成果を報告する。特に、陸域の熱・水・二酸化炭素収支の観測ネットワークや長期生態学研究ネットワークに基づく炭素収支広域評価、地上観測とリモートセンシングに基づくバイオマス広域評価に関する研究を、日本(特に北海道)および東南アジア(特にボルネオ)のテストサイトを対象として複数の研究グループと共同で実施してきた結果と今後の課題を紹介する。


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