| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T16-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

衛星リモートセンシングによる生態系機能の広域評価

鈴木力英(国環研)

生態系機能やサービスの地理的広がりやその時間変化を知ろうとした場合,一般に衛星観測によるデータを利用することが多い。しかし,衛星からは生態系機能/サービスを直接的に測ることはできないので,それらを推定するためのプロキシー(代理指標)を衛星観測より得ることになる。そのプロキシーは大きく分けて2種類ある。一つは,土地被覆分類とその分布の地図化である。地表面を森林,草地,裸地,農業地域などに分類し,その分布を地図上に表現することによって,各種生物の生息域,さらには生態系の特徴や機能の分布を把握することができる。もう一つのプロキシーは植生物理量である。森林の葉面積指数や地上部バイオマスは,森林の一次生産機能や炭素固定量を知る手掛かりとなる。

本研究プロジェクトでは釧路川流域とマレーシアのサラワク(ボルネオ島)をテストサイトとして,衛星データから生態系機能/サービスに関するプロキシーの推定を行った。釧路川流域では,衛星ASTERのデータを使って,まず土地被覆を分類し,生態系の分布の特徴を明らかにした。また,同時にASTERからは葉面積指数など,ALOS/PALSARからは森林地上部バイオマスの分布といった植生物理量を地図化した。以上のような衛星データから導出された情報は,生態系サービス評価ツール「InVEST」に入力され,釧路川流域の生態系サービスの分布推定に利用される。一方,サラワクではプランテーション開発について,年ごとの拡大の様子をLandsatやALOS/PALSARのデータを用いて明らかにした。開発によって,現地の地域社会はパームオイルの収穫という生態系からの供給サービスを受けることになるが,一方で自然林や二次林の消失は,高い生物多様性を失うことに繋がる。このようなサラワクにおける生態系機能/サービスの変化を評価するための基礎的な情報を衛星データに基づき作った。


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