| 要旨トップ | ESJ60 フォーラム 一覧 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


フォーラム U03 -- 3月7日 9:30-12:30 J会場

津波被災地での復興工事と生態系保全―「自然の恵み」をどう活かすか

主催:生態系管理専門委員会  竹門康弘(京大・防災研), 津田智(岐阜大・流域研)

東北地方の津波被災地では、防潮堤の工事が急速に進められています。防潮堤は、人間の生命や財産を守る重要な役割が期待できる一方、内陸と沿岸の間での生物や土砂の移動を妨げ、干潟、砂丘、後背湿地といった、海岸付近に固有な生態系やその連続性の破壊を招くことが考えられます。これらの生態系は、生物多様性保全上重要であるばかりでなく、水産資源をはじめとする多くの自然の恵みや、豊かな景観をはぐくんでおり、地域社会に欠かせない貴重な財産です。しかし現在、防潮堤の工事は、多くの場合このような負の側面の検討や評価が不十分なままに進められています。

日本生態学会生態系管理専門員会は、植生学会企画員会ならびに日本水産学会水産環境保全委員会と共同で、「津波被災地での防潮堤建設にあたっての自然環境への配慮のお願い」を、岩手県、宮城県、福島県の各県知事に提出しました(http://www.esj.ne.jp/esj/Activity/2012Bouchotei.html)。この文書では、県や市町村に対し、防潮堤建設の検討における知見の提供や専門家の紹介などの協力をしたい旨を申し出ています。今後も現場の状況に詳しい研究者からの情報収集と、行政諸機関との連携に努めていきたいと考えています。

フォーラムでは、津波被災地の最新の状況について話題提供していただくとともに、今後の学会内での情報共有、省庁、地方自治体、地域コミュニティーとの連携の在り方について議論したいと思います。防災のための海岸・河川の改変は、東北地方以外の地域でも進められています。被災地で研究されている方だけでなく、これらの問題に関心をお持ちの多くの方のご参加をお待ちしております。

「自然の恵み」を活かす復興の必要性 竹門康弘(京大・防災研)

仙台湾/砂浜海岸エコトーンからの問いかけ 平吹喜彦(東北学院大・教養)

福島県松川浦の津波被災地の植生と植物相 黒沢高秀(福島大・共生システム理工)

三陸リアスの内湾・河口のメタ群集:広域管理への願い *松政正俊(岩手医科大学・生物), 木下今日子(岩手大学三陸復興推進機構)

漁場環境と水産業利用の観点から 清野聡子(九州大学・工学)


日本生態学会