| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-17 (Oral presentation)

農業用水路生息場保全における連続性の重要性:淡水二枚貝と宿主魚類の広域解析

*根岸淳二郎(北大地球環境),玉置弘幸(北大地球環境),永山滋也(土木研共生セ),渡辺のぞみ(北大地球環境),久米学(岐阜経済大),萱場祐一(土木研共生セ)

生息場の連続性と局所環境は生物の個体群維持において共に重要である.移動能力が低く他分類群に移動・分散を依存する寄生者に該当する分類群の保全においては、宿主に対する生息場連続性を特に考慮する必要がある.淡水二枚貝であるイシガイ目(Unionida)はこのような寄生者に該当し、宿主魚類の分布・群集構造に強い影響を受けると考えられる.イシガイ目(Unionida)の生息数や種数は、その他底性動物や魚類の群集構造の健全性の指標となるが、近年、生息数の減少や生息範囲の縮小が世界的に報告され、その保全が求められている。本研究は、東海三県の農業用水路を対象とし、イシガイ目の生息分布にとって、局所的な生息環境条件(たとえば、底質)と水路の連続性(下流河川との接続状況)の相対的重要性を定量的に明らかにした.イシガイ目の生息有無及び生息密度を目的変数とし、局所要因と連続性を説明変数にした一般化線形モデル(GLM)などによる解析を行った.イシガイ目の生息有無のベストモデルでは連続性が選択され、その重要性は40%程度となった。一方、生息密度のベストモデルでは連続性が選択されなかった.両者の結果が異なるのは、連続性が移入率に影響し、移入後の生息密度増加には局所要因が強く影響するためと考えられた.魚類の解析では、連続性との関係を十分に明らかにできなかったが、カワムツ属が関係している可能性が示唆され、その生息分布情報がイシガイ目の保全計画立案に寄与できるかもしれない.連続性の向上・改善が局所環境の改善と比較して困難なため、生息地保全においては、特に連続性がある水路における連続性の維持と局所要因の改善が効果的であると考えられた.


日本生態学会