| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) C2-07 (Oral presentation)

アメダスデータと空中写真を用いた竹林の分布要因解析と温暖化による分布拡大予測

*高野(竹中)宏平,沼田絢香,小黒芳生,中静透(東北大・生命科学)

タケは日本人の生活に密接に結びつき人里に植えられてきたが、現在は放棄竹林の増加、隣接する森林の利用低下などが要因となって分布が拡大しており、生物多様性の低下や土砂災害の危険性などが懸念されている。もともと南方種であるタケ(主にモウソウチク(外来種)とマダケ)は温暖化によって分布拡大が加速する可能性があり、竹林の分布拡大リスクが高い地域を特定し、適切に対策・管理する必要がある。

先行研究では、暖かさの指数72-205の範囲のみに竹林が分布することなどが報告されているが、用いられた国土数値情報の3次メッシュデータでは気候値の精度に限界があると考えられた。そこでより高精度の気候データを用いて解析するため、本研究では青森から京都までの149市町村からアメダスを選定し、半径5km以内を車で周って竹林の有無を記録した。そのうち54カ所については過去(1975~1980年)の空中写真から竹林の在不在も確認し、この時期以降に新たに竹林が定着した地域を特定した。

直近に位置するアメダスの観測値を用いた解析の結果、年最低気温が-17℃以上であることが竹林の定着に必要であると考えられた。一般化線型モデルを用い、竹林の有無を応答変数、アメダスの気象観測値と自然環境保全基礎調査から得られる周辺の土地利用比率を説明変数として、ロジスティック分布を当てはめた。相関の強い説明変数の組合せを除外し総当たりでモデル選択を行うと、暖かさの指数・年日照時間・森林率を説明変数とするモデルがAICc最小モデルとなった。今後は、空中写真から算出した竹林面積の時系列比較から、竹林の拡大速度についても解析を進めると同時に、温暖化条件下における竹林の拡大リスクをマッピングしていく予定である。


日本生態学会