| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-02 (Oral presentation)

東京湾におけるスズキの行動と海洋環境の関係

*森友彦(東大大海研),宮田直幸(東大大海研),田上英明(OPRF),水島康一郎(三洋テクノ),新沢丘(東大大海研),佐藤克文(東大大海研),宮崎信之(OPRF)

生物は多かれ少なかれ生息環境の影響を受けて生活している。特に沿岸域は河川の流入や人間活動の影響により環境の変動が激しい。スズキLateolabrax japonicusは沿岸生態系における上位捕食者であり、また近年はスポーツフィッシングでも人気の魚種である。本研究では、東京湾において捕獲したスズキに加速度計を装着・放流し、その行動と海洋環境との関係を調べた。

2011年の6,11月および2012年の6,10月に千葉県の盤州干潟から富津沖にわたる海域においてスズキ8尾(FL 456 - 736 mm)を捕獲し、加速度計(深度、水温、加速度を記録)を装着した後に捕獲地点で放流した。放流後48-72時間後に、自動切り離し装置によって海面まで浮上した記録計を発信器の信号を頼りに回収した。加速度データから突発的なバースト行動および活動量を算出し、得られた海洋環境(深度、水温、潮位、日照パターン)のデータとの関係を調べた。潮位データは海上保安庁、日照パターンは気象庁のデータベースから得た。なお、解析には放流24時間以降のデータを用いた。

野外調査では合計約278時間の遊泳行動データが得られた。活動量は、深度、水温、日照パターンにより変動し、特に水温および日照パターンの影響が大きい、つまり水温が高いまたは日の出前後に活動度が上昇することが示唆された。一方、採餌行動を含むと考えられる突発的なバースト行動は、活動量が高い時に発生する傾向はあるものの、海洋環境の影響はあまり受けていないことが示唆された。


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