| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-04 (Oral presentation)

野生ニホンザルの腸内細菌叢解析:サンプル保存方法による影響の比較

*澤田晶子(京都大・霊長研),福田真嗣(慶応大・先端研),半谷吾郎(京都大・霊長研)

食物の消化や吸収に密接に関連する腸内細菌は、宿主である動物の適応度を左右する非常に重要な存在である。ヒトを対象にした先行研究によると、腸内細菌叢は食事内容と強く相関し、人種や性別によらず3つのタイプ(エンテロタイプ)に分かれることが判明している。ニホンザルの採食生態について理解を深める指標として腸内細菌叢解析をおこなった。屋久島・西部林道域に生息する野生ニホンザル(Macaca fuscata yakui)から糞を採取し、次世代シークエンサーで網羅的に細菌の塩基配列を解読した後、配列データベースに対して相動性検索をおこない、配列の由来する分類群を決定した。結果、個体差は見られたものの、ニホンザルの腸内細菌叢はすべてPrevotellaタイプであることが判明した。これは、炭水化物中心の食事と関連するエンテロタイプであり、調査時期のニホンザルの主要食物がタブノキやヤマモモの果実という高炭水化物食物であったことを反映していると考えられる。糞中の細菌叢は空気に触れるとバランスが崩れてしまうため、排泄後の糞は迅速にサンプリングし、すぐに-30℃のフリーザーで保存する必要がある。また、人為的コンタミネーションを防ぐためにはマスクや手袋を着用したうえで、滅菌したピンセットで採取する必要があるなど、手間や困難を伴うことが多い。環境・設備の整っていない野外調査地でも実施可能なサンプリング方法について議論する。


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