| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-14 (Oral presentation)

ゾウムシの音声を介した配偶行動

*熊野了州,鶴井香織(沖縄防技セ, 琉球産経, 琉大農),城本啓子,豊里哲也(沖縄防技セ, 琉球産経),立田晴記(琉大農)

発音や振動を個体間のコミュニケーションとして用いる昆虫の存在は広い分類群で知られている.一部のゾウムシ科の昆虫は鞘翅裏面に発音器官を有しており,南西諸島に生息するサツマイモの害虫であるイモゾウムシEuscepes postfasciatusにもこうした発音器官が見られ,雌雄とも発音(摩擦音)が可能である.本種では,交尾前マウントにおける発音器官からのシグナルが求愛行動を通じて交尾成功に関与していると考えられており,メスの発音が交尾拒否を示す拒絶音としての機能を持つ可能性が示唆されている(Yasuda & Tokuzato, 1999).ただ,本種の発音は微弱であり,暗黒下での配偶行動の観察は困難を伴うため,発音が交尾成功(精子輸送)に与える影響の詳細は未解明のままである.本研究では,鞘翅裏面後端に存在する発音器官の有無が交尾成功に及ぼす影響を明らかにするため,発音器官を人為的に切削し,配偶行動を観察する実験を行った.従来の仮説が正しければ,メスの拒絶音が消失することで,交尾受け入れ頻度は上昇すると予測されたが,処理メスへのマウント時間は無処理メスに比べ短く(オスの求愛強度の低下),一晩オスと同居させた際の交尾率は無処理メスと変わらないことが明らかになった.イモゾウムシのメスの発音に交尾拒否に関する信号が含まれるとする従来の説明とは矛盾しており発表ではイモゾウムシの発音の意味を改めて考える.


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