| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-17 (Oral presentation)

カワトンボ2種の種間相互作用と翅色多型の地理変異

*椿 宜高,奥山 永(京大•生態研),清 拓哉(科博)

近縁種が同所的に分布した場合、次の4種類の進化的帰結が期待される。(1)A種の排除、(2)B種の排除、(3)微生息地の分割による共存、(4)形質置換による共存である。形質置換は採餌形質(口器)、闘争形質(武器)、繁殖形質(生殖器)、シグナル形質(色彩、音声、匂いなど)などに生じ、それぞれ生起要因が異なるため、それぞれ、生態形質置換、闘争形質置換、繁殖形質置換、シグナル形質置換と呼ばれる(最後の3つは区別しない研究者が多いが、区別することで進化メカニズムがより具体化する)。

カワトンボ属の2種(Mnais costalisM. pruinosa)は、単独で分布する地域(北海道•東北、南紀•四国•九州の大部分)ではオスに翅色多型(橙色翅型オスと透明翅型オス)が見られるが、共存する場合(近畿•北陸•中部の大部分)は翅色多型が消失すること(形質置換)が知られている。この現象は、異種オス間闘争、繁殖干渉、種間交雑を避ける機能をもつシグナル形質置換として理解できる。しかし、色彩多型の地理的変異をより詳細に検討してみると、次のような対称性、非対称性が見られる事がわかってきた。

(1)M. costalis橙色単型オスとM. pruinosa透明翅単型オスの共存

(2)M. costalis多型オスとM. pruinosa透明翅単型オスの共存

(3)M. costalis橙色単型オスとM. pruinosa多型オスの共存

(4)M. costalis多型オスとM. pruinosa多型オスの共存

これらの非対称性について、その要因に関する解釈を試みたい。


日本生態学会