| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-04 (Oral presentation)

葉食者が花形質を介して訪花者群集に与える影響

*池本美都(京大生態研),大串隆之(京大生態研)

花は栄養豊富な資源であるため、様々な生物が集まり群集が形成される。これまでは訪花者群集として主に送粉者だけが注目されていた。しかし、花を訪れるのは送粉者だけではない。花食者、盗蜜者、捕食者もまた数多く訪花し、送粉者の訪花行動に影響を与える。また、生長期の植物に対する葉食害は、花数や花蜜量の減少を招き、送粉者の訪花数を減少させる。訪花者群集の形成機構を理解するためには、植物―送粉者の関係だけではなく、葉食者と非送粉者をも含む相互作用を明らかにする必要がある。そこで演者らは、葉食者が訪花者の群集構造に与える影響を解明するため、セイタカアワダチソウを用いて操作実験を行った。

2010年7月、栄養生長期のセイタカアワダチソウ100株のうち、50株には優占植食者のアワダチソウグンバイを4個体ずつ接種し、残りの株には何も接種せず、寒冷紗で覆った小型温室にて3カ月間育成した。開花直前にグンバイ接種株47ポットと非接種株36ポットを屋外に設置し、開花期間中に12回、花序上に見られた節足動物の分類群とその個体数を記録した。

グンバイの接種により、実験植物の小花数の減少、開花期の遅延が生じた。大型のハエ(送粉者)、クモ(捕食者)、鱗翅目幼虫・カメムシ・ツユムシ(花食者)の訪花数はグンバイの接種株で減少し、小型のハエ(盗蜜者)は増加した。その結果、接種株では送粉者と花食者の割合が低下し、盗蜜者の割合が増加した。PERMANOVAとPERMADISPにより、訪花者の群集構造が処理間で異なることが明らかになった。パス解析の結果、送粉者には食害による花数低下や開花期の遅延が、花食者には上記以外の形質を介した食害効果が影響していた。ミツバチの訪花数はクモによって減少し、小型のハエに対してはミツバチからは負の、大型のハエからは正の効果が検出された。


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