| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-05 (Oral presentation)

放射性炭素同位体を用いたアラスカ永久凍土における土壌炭素収支の推定

*近藤美由紀,内田昌男(国環研),内海真生(筑波大・生命環境),岩花剛,吉川謙二,原薗芳信(アラスカ大),岩田拓記(京大・農),中井太郎(名大・生命農学),田邊潔,柴田康行(国環研)

近年の地球温暖化に伴う気候変動が自然界のフィードバックを介して最も顕著に現れるのが、北極圏およびその周辺地域である。これら地域に広がる永久凍土中には、最終間氷期以前から累々と蓄積されてきた多量の有機炭素が、低温かつ嫌気的な環境下で長期間安定して存在してきた。急激な温暖化は、永久凍土の融解を進行させており、今後永久凍土中の有機炭素は減少し、温暖化を加速させる正のフィードバックを起こすと予想されているが、そこには大きな不確実性が残されている。北極域土壌圏における炭素動態の解明と正確な炭素収支の試算は、将来予測における不確実性を小さくするために、非常に重要である。本発表では、放射性炭素同位体14Cを用いた永久凍土における土壌炭素収支の推定に関する研究例を紹介する。北米アラスカを代表する生態系(北方林、ツンドラ)に観測地点を設け、深さ毎に有機炭素現存量を求めた。加えて、国環研の所有する加速器質量分析計(AMS)にて土壌有機炭素の14C分析を行い、生成年代を求めた。これらのデータを用いて、永久凍土層を含む土壌の分解率と年間当たりの炭素供給量を求めた。林床にコケが優占する北方林(クロトウヒ林)では、夏期に融解し活動層となる表層0〜23cmに蓄積する有機炭素は、過去50年間に蓄積したと推定され、その量は5.3kgCm-2であった。土壌有機炭素の供給量と分解率は、過去50年間の平均で、それぞれ0.25 kgCm-2 yr-1と0.037であった。この結果と有機炭素現存量から、この北方林の表層では1年間に52 gCm-2の有機炭素が土壌に蓄積していると試算された。


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