| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-16 (Oral presentation)

ニジュウヤホシーオオニジュウヤホシテントウの分布境界はいかに決まるのか

内田千嗣,*西田隆義(滋賀県立大・環境生態)

近縁な生物が、穏やかな環境勾配の下で側所分布する現象は古くからよく知られ、多くの研究がされてきた。しかし、現在でも側所分布が成立する理由は定かではない。この講演では、ニジュウヤホシとオオニジュウヤホシの側所分布を繁殖干渉により説明する。

穏やかな環境勾配の下で、移動性の高い生物種が側所分布を形成するためには、両種の間に対称的で強い繁殖干渉が必要である。この予測を検証するために、求愛実験と野外での分布調査を行った。まず、両種それぞれの♂♀ペアに、同種♂か異種♂を一匹を同居させ、その後に♂を一匹除去する実験を行った。その結果、同種異種ともに♂の追加はメスの産卵数を低下させず、その後の♂の除去もむしろ産卵数を低下させた。次いで、両種の♂♀をそれぞれ一匹ずつ同居させて、メス単独の場合の産卵数と比較した。異種♂は、メスの産卵数を1/4以下に激減させ、同種♂でも半減させた。こうした悪影響は、♂の除去とともにただちに無くなった。これらの奇妙な結果は、同種であれ異種であれオス同士の行動的な相互作用を考慮すると説明が可能となる。すなわち、オス同士が互いに邪魔しあう結果、複数のオスが存在するとメスはオスからの干渉を受けにくくなるというわけである。繁殖干渉の効果は、実験設定により大きく変わったため、現在の結果からは、繁殖干渉が側所分布形成の主因とは結論づけられない。 

これまで、繁殖干渉の研究では、同種ペアに異種オスを追加するという実験設定が多く行われてきた。しかし、こうした設定はオス同士の相互作用がある場合には、繁殖干渉をかえって見えなくする可能性が出てきた。過去の同様の研究で、繁殖干渉が認められない結果についても再検討が必要かもしれない。


日本生態学会