| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-02 (Oral presentation)

熱帯雨林の林冠部で見られたアリとクモの排他的空間分布

*片山元気1・岸本圭子2・田中洋1・遠藤知二3・橋本佳明4・市岡孝朗1 (1京大院・人環, 2東大院・総合文化, 3神戸女学院大, 4兵庫県立大)

熱帯林には多種多様な生物が生息していて、生産活動の大部分が林冠部で行われているが、そこに生息する節足動物の群集構造を詳細に解明した研究はほとんどない。殺虫剤噴霧法で得られた林冠節足動物のサンプルから、共に捕食者であるアリとクモが多く生息していることが分かっている。両者は、広食性の捕食者として他の節足動物の空間・資源利用に大きな影響を与え、また、捕食者間には強い種間競争がはたらくことも予想される。そこで、本研究では、林冠部の節足動物群集をより詳細に理解するために、マレーシアのランビルヒルズ国立公園内で、高木の樹冠部に生息するアリとクモ類の空間分布をすくい網採集法を用いて調査した。林冠クレーンを用いて、2009年9月から2011年2月にかけての合計5回の採集により、71樹種から、94種399個体のアリと147形態種 (成体のみ) 1877個体のクモが得られた。樹木ごとに両者の個体数を集計すると、クモ個体数と科の数はアリの個体数と負の相関関係にあった。一方、クモ種数とアリの個体数、およびクモの乾燥重量とアリの乾燥重量との間には相関関係が認められなかった。両者の種間競争が、負の相関をもたらす要因となっている可能性が示唆された.


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