| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-05 (Oral presentation)

外来樹種ナンキンハゼの無性繁殖による個体群の拡大

*森家侑生,名波哲,山倉拓夫,伊東明(大市大・理)

生物にとって無性生殖は、性器官の発達や交配相手の存在に関わらず個体群を拡大する手段である。植物には、有性生殖と無性生殖の両方を行う種も少なくない。トウダイグサ科ナンキンハゼ属のナンキンハゼ(Triadica sebifera)もその1つであり、地中に広がった根から新たな幹を発生させることが確認されている。本研究ではナンキンハゼの無性生殖による個体群拡大過程を明らかにすることを目的とした。

奈良県奈良市御蓋山の25 m x 60 mプロット内の個体群において、SSRマーカーにより、個々の幹の遺伝子型を決定した結果、321本の幹が214クローンで構成されていた。クローンは、3~12歳で全長3.0~47.8 mもの不定形の領域に存在するものが確認された。また、クローンの中には、占有空間を拡げる幹と、占有した空間を埋めるように生える幹が存在した。次に、クローン構造の形成過程を探るため、幹を刈り取って年輪を読み、過去の成長履歴を明らかにした。その結果、若年の幹が多いクローンほどクローン内の最大の幹サイズが小さいことが分かった。このことから、クローン幹同士は物理的につながっており、より若年の幹への光合成産物の転流が起きていることが示唆された。


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