| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-09 (Oral presentation)

外来昆虫ブタクサハムシの移入地環境への適応:光周性における遺伝変異の検出

*田中幸一(農環研),村田浩平,松浦朝奈(東海大・農)

外来生物が移入地に定着し分布を拡大するためには、移入地の環境に適応しなければならない。移入地の環境は原産地とは異なるため、適応の過程で特性が変化することがある。北米原産の外来昆虫であるブタクサハムシは、1996年に千葉県で発見されたが、その後急速に分布を拡大し、現在までに沖縄県を除く全都道府県で発見された。このように急速に分布を拡大したため、本虫の移入時の生活史特性は、各地域の気候や寄主植物のフェノロジーに適しているとはかぎらず、移入後に生活史特性が変化する可能性がある。

ブタクサハムシは、短日により成虫の生殖休眠が誘導される。演者らはこれまでに、本虫における生殖休眠誘導に関する光周性が、日本に移入後に変化した可能性の高いこと、全国各地で採集した系統について地理的変異があることを報告した。このように急速な光周性の変化を生ずる遺伝的機構を明らかにするため、人為淘汰実験を行った。生殖休眠を誘導する臨界に近い日長(13L:11D)において、本虫つくば個体群(2005、2006、2012年系統)を飼育し、羽化後12日間に産卵しなかった雌を休眠個体,産卵した個体を非休眠個体として、人為淘汰を行った(雄には淘汰をかけなかった)。その結果、5~8世代で休眠率が0%(非休眠淘汰)または100%(休眠淘汰)に達した。実験結果から推定した実現遺伝率についても報告する。雄には淘汰をかけなかったことを考慮すると、淘汰に対する変化が非常に早く、光周性に関する遺伝変異の大きいことを示している。


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