| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-002 (Poster presentation)

「被度」という割り算が織りなす連続確率分布:調査面積が不定の場合について

池田浩明((独)農環研)

植生研究において、「被度」は最も良く使用される植生の測度のひとつである。この被度は植物体の被覆面積を調査区の面積で割った比率データであり、統計検定をする際に注意を要することが知られている。しかし、被度という比率データがどのような確率分布を示すのかは、十分に明らかにされていない。そこで、文献調査によって調査面積データの分布型を解析し、現実的な調査面積の分布に基づいて仮想的な被度データを作成し、その分布特性について検討した結果を報告する。

植生学会誌に掲載された論文を調査し、調査面積が不定で、かつ、群落タイプ別で20区以上の調査面積が示された12論文16組の調査面積データを使用して、代表的な連続分布へ当てはめた場合のパラメータを最尤推定し、AICに基づくモデル選択で適合分布を決定した。次に、高木林における調査面積の実データを想定した対数正規分布とガンマ分布から乱数を発生させて調査面積とし、被度の期待値(平均)と分散が変動するようにパラメータを変えた同連続分布から乱数を発生させて被覆面積とした。これらの面積値から仮想的な被度データセット(分布型の組合せ別、被度期待値別にN = 1000になるまで計算;被度が1を超えた場合は再計算)を100組作成し、調査面積と同様な方法で各データセットの適合分布を決定した。

調査面積データの分布は、対数正規分布>ガンマ分布>一様分布の順によく適合したが、正規分布とコーシー分布には適合しなかった。適合分布は、群落タイプで大きく異なった。

仮想的な被度データの分布は、対数正規分布に適合する場合が多かった。ただし、被覆面積がガンマ分布の場合は、被度期待値が小さいほどガンマ分布に適合する傾向を示した。以上より、被度の統計検定には対数正規分布とガンマ分布を想定する必要があることが示唆された。


日本生態学会