| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-012 (Poster presentation)

鳥取県大山ブナ老齢林における主要構成樹種の稚樹の個体群動態の比較

*鳥丸猛(弘前大・農生),佐野淳之(鳥大・農),永松大(鳥大・地域),松下通也(秋田県大・生物資源),戸丸信弘(名古屋大・生命農学),西村尚之(群馬大・社会情報)

森林群集内では自然撹乱に対して種の応答が多様化することによって種の共存が促進されることが知られている。これまでブナ天然林において胸高直径(DBH)≧ 5cm の成木の個体群の死亡動態を調査した結果、強い集中分布を示すコミネカエデは台風撹乱による死亡率が高く、ランダムな空間分布を示すハウチワカエデは撹乱と死亡率の関連性は認められず、さらにブナ個体群は根返りを起こす強度の台風撹乱の場合のみ高い死亡率を示すことを報告した。一方、稚樹群集は上層の成木群集によって台風の直接的な影響から保護されているため、成木群集とは異なる台風撹乱への応答が予想される。そこで、本研究は鳥取県大山のブナ天然林に設置した固定調査区内において、上記の3樹種の稚樹(樹高 ≧ 30cm かつDBH < 5cm の幹)の個体群動態を比較した。2009-11年には大山付近を通過した台風は2回記録されたが、2011-13年には台風の通過は認められなかった。毎木調査の結果、ブナとコミネカエデの2009-11年における死亡率は2011-13年よりも高く、ハウチワカエデでは2011-13年の死亡率が高かった。ハウチワカエデとコミネカエデにおける倒木・落枝に起因する損傷による死亡は、2011-13年よりも2009-11年で約1.5倍多く認められたが、一方、ブナでは調査期間の間に差異が認められなかった。以上から、台風の影響を受ける期間では、稚樹個体群の死亡率または物理的損傷による死亡割合が上昇する傾向が認められたが、稚樹と成木の個体群で異なる傾向を示す場合も認められ、本報告では稚樹個体群の空間構造と過去の森林の撹乱履歴に基づき、稚樹個体群の自然撹乱に対する応答の違いを創出するメカニズムを議論する。


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