| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-022 (Poster presentation)

クロマツ人工林に分布を拡大するシロダモ稚樹の母樹からの距離

*紙谷智彦(新潟大院・自然科学),中村結花(JA柏崎),秋保開祉(新潟大院・自然科学)

新潟市の海岸クロマツ人工林には、遷移の進行に伴って、常緑高木のシロダモが侵入し、林床には第二世代の稚樹が更新している。

本研究は、①この第二世代のシロダモの稚樹密度に及ぼす第一世代の母樹の位置、②稚樹の分布と成長に及ぼす林内環境の影響、について検討した。

52年生のクロマツ人工林の林縁と歩道の間に0.6haの調査区を設定した。調査区内に更新したシロダモ稚樹437本を対象に、樹高、樹齢(芽鱗痕数)、位置を測定した。光環境は、すべての樹高位置で光量子センサーにより測定した。第一世代の母樹は、調査区の周辺150mの範囲に分布する個体の位置を測量した。

これら母樹と稚樹密度との関係を調べるため、調査区を4区画に分け、区画の中心から一定の距離でバッファを発生させ、含まれる母樹数を記録した。また、区画の中心から各区画の周辺に分布するすべての母樹までの距離も計測した。

区画内の稚樹数と母樹数の間には、バッファ距離130mで最も高い相関があった。また、区画内の稚樹数と区画中心から全母樹までの積算距離との間には有意な負の相関があった。

調査区を林縁と平行に幅5mのベルトで区画した場合、稚樹の分布は林縁側に偏っていた。ベルト間の平均樹齢に有意な差は無かったが、平均樹高は林縁に近いベルトほど高かった。さらに、各ベルトに出現した稚樹の平均樹高と光環境の間には有意な相関があったことから、光環境の良い林縁部分で定着し、良好に成長していることが示唆された。


日本生態学会