| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-034 (Poster presentation)

熱帯樹木における開花個体の空間構造

国立環境研究所

植物集団の空間的構造は、ランダムよりも集中分布しているパタンが比較的よく観察される。こういった空間配置は、限られた種子散布距離による散布制限や、その後の定着の段階での更新制限により決定される。一方で、集団中で開花・結実個体が空間的に偏るパタンも見られる。こういった繁殖個体の空間的な配置の偏りも、局所的な種子散布制限を引き起こし、その後の集団の空間分布に大きな影響を与えるだろう。本研究は、種子散布距離の異なる2種を対象として、開花個体の空間分布の偏り、空間構造に影響する要因を比較・検討した。

調査は、マレーシア・ランビル国立公園で行った。対象としたフタバガキ科2種のうち、Shorea beccarianaは果実には翼があり、風によって長距離種子散布する。一方で近縁種であるShroea laxaは果実には翼がなく、重力による散布のみで、散布距離が限られている。2004-2013年にそれぞれの種で4回の開花を観察し、開花個体の記録を行った。

開花個体の分布の解析の結果、S. beccarianaでは開花個体が空間的に集中分布していたが、S. laxaでは集中分布はみられなかった。また両種において、前回開花している個体、胸高直径が大きい個体ほど開花しやすい傾向が見られた。S. beccarianaは、種子散布距離は大きいものの、開花個体の集中分布による散布制限がある。一方で、S. laxaでは、開花個体の集中は起きていないが、短距離の種子散布による散布制限がある。つまり、この2種では、異なるメカニズムでの散布制限が集団中の分布パタンを決定していることが示唆された。このような開花個体の集中分布が、今後の集団内の分布パタンにどのように寄与するか、また種の共存にどのような役割を果たすかについても議論する。


日本生態学会