| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-050 (Poster presentation)

モンゴル半乾燥地域におけるアクナテルム属群落の水利用特性

*遠藤いず貴,大手信人,額尓 徳尼,大黒 俊哉(東大院農),Undarmaa Jamsran(モンゴル農大),川上聖,樋口篤志(千葉大),山中 典和(鳥取大・乾地研),那 沁,廣部 宗,吉川 賢(岡山大)

本研究は、モンゴル国マンダルゴビ地域においてイネ科多年生草本のAchnatherum splendens(以下、アクナテラム)が、河畔や中州のマウンド上に密な群落を形成するという知見に着目し、地下部のバイオマスと立地条件との関係から、この種がどのように水を獲得し、群落を発達させるかというメカニズムを推定することを目的とした。マンダルゴビ地域の河床から河畔斜面上部へ3本のトランセクトラインを設け、アクナテラムが密あるいは疎な群落に調査区を設定した。密な群落は河畔のマウンド上、疎な群落は河畔斜面上方約100 mまでの位置にある。全地上部および地表から20 cm深度毎に根と埋没した株を採取し、乾重量を測定した。埋没株はかつてその深度に地表面があったものと推測される。土壌は深度別に採取し、粒径分布を調べた。

地上部のバイオマスは、密な群落で疎な群落に比べ約4倍大きかった。地下部のバイオマスのうち、根に群落間で有意差はなかったが、埋没株は密な群落で有意に大きかった。密な群落の埋没株は地表から深さ40 cmまで存在したのに対し、疎な群落では深さ20 cmまでだった。密な群落の地表から深さ20 cmで、埋没株の途中や分蘖部分から根の発生が認められ、埋没株は根の発生源となることが分かった。土壌の粒径は河畔マウンド上の密な群落で細砂のクラスでそろっていたが、斜面上部の疎な群落で多様だった。細砂の均質な河畔のマウンド上では乾砂層の形成によって、土壌中の水分が保持されやすい可能性がある。以上のことから、アクナテラムは洪水時に生じる細砂の移動による河畔の堆積を利用して、吸水範囲を広くし、有利な水分環境にすることで密な群落を形成することが推測される。


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