| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-075 (Poster presentation)

Farqhuar-Leuningモデルを利用した野外環境での光合成最適温度の季節・標高変化の再現

*飯尾淳弘(静岡大フィールド), 王権(静岡大農), 角張嘉孝(静岡大農)

葉の光合成(光飽和時)の温度カーブは、低温と高温で低く、中程度の温度にピーク(光合成最適温度;Topt)をもつ。植物はToptを生育環境に応じてシフトさせることが知られており、新しい環境での光合成の維持に役立っていると考えられている。これまで、こうしたToptの変化は生化学的側面から考察されることが多く、気孔の影響を排除するために、温度カーブは湿度を一定にして測定されてきた。しかし、野外では、温度上昇にともない湿度が低下するので、気孔閉鎖によって光合成速度が低下すると予想される。こうした高温での光合成の低下は、Toptの上昇を抑制する可能性がある。そこで、野外におけるToptの変化の実態を調査するため、ブナ成木の陽葉を対象として、Farqhuar-Leuningガス交換モデルのパラメータ(最大カルボキシレーション反応速度;Vcmax、最大電子伝達速度;Jmax、暗呼吸速度;Rd、Vcmax、Jmax、Rdの活性化エネルギー、Jmaxのエントロピー項、気孔係数)を2標高(550m、1500m)で季節別(5~10月)を通して調べた。そして、8年間の気象データとガス交換モデルを使って、Toptの季節、標高変化を再現した。その結果、Toptは季節、標高に対してほぼ一定(21~23 ℃)で推移しており、日中(7:00~17:00)の平均葉温とToptには弱い相関しか見られなかった(p = 0.02)。高湿度条件で再現すると、Toptに強い温度依存性が見られたことから、Toptの変化には湿度を介した気孔反応が重要な役割を果たしている可能性がある。


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