| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-091 (Poster presentation)

半着生植物の生育段階の進行に伴う窒素吸収源の変化

小池直哉(京大農)*, 神崎護(京大農), 中西晃(京大農), 中野孝教(地球研), Chongrak.Wachirinrat(カセサート大学林学部), Taksin.Artchawacom(Sakaerat Environmental Research Station)

半着生植物(一次半着生植物)とは、樹上で発芽し着生植物として生活した後に気根をおろして地面と連結する植物群をさす。地面と連結のない半着生植物は大きな養分プールである土壌の養分を利用できないため、雨や樹幹流、樹上堆積有機物由来の窒素を利用していると考えられる。本研究では半着生植物中の生活史段階の移行に伴う窒素安定同位体比の変動を明らかにすることで窒素吸収源の推移を推定し、定着初期過程の窒素獲得戦略を考察する。

調査は2012年11月に東北タイのサケラート環境研究センターで行い、様々な生活史段階にある3種の半着生植物Fagraea ceilanica、Ficus altissima、Schefflera bengalensisについて、葉を採取し、窒素含有量と窒素安定同位体比δ15Nを測定した。雨水中の無機態窒素のδ15Nは-6‰~-2‰であり土壌水中の0‰~6‰と比べて低いため、δ15Nを用いることで窒素吸収源の推定が可能となる。

様々な生活史段階にある半着生植物の葉中窒素濃度とδ15Nは大きく変動し、両者は正の相関を示した。地面と連結を持たず雨水などの限られた窒素を利用する葉中窒素濃度の低い個体から、地面と連結し土壌窒素を利用する高い葉中窒素濃度をもつ個体までが存在し、窒素供給源も連続的に変化していく様子が明らかとなった。

地面との連結を持つものの中で大きなδ15Nの幅がみられることから、気根をおろした後も降水起源の窒素への依存が継続していることが示唆された。


日本生態学会