| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-118 (Poster presentation)

オオバギ属植物(トウダイグサ科)の送粉に係る花序形態の進化

*山崎 絵理, 川北 篤, 酒井 章子(京大・生態研)

被子植物の多くは、動物に花粉の媒介を頼っている。一般的な送粉様式では、花粉・蜜が送粉者への報酬となっているが、油、樹脂、フェロモン前駆体、熱を報酬として動物に与える植物も存在する。

トウダイグサ科オオバギ属植物の一部では、アザミウマやカメムシによる送粉様式が知られている。この送粉様式では、花を覆い隠す花序の小苞葉がうろこ状に並んでおり、蜜のほか、小苞葉の間隙を繁殖場所として送粉者に提供している点で、他の多くの植物の送粉様式と異なっている。本研究では、この送粉様式がどのように進化したのか明らかにするために、花序形態、特に種間で形態差が大きく、アザミウマ媒・カメムシ媒の種で送粉者への報酬を提供している小苞葉の形態の多様性と進化について調べた。オオバギ属は約260種を含むが、そのうち約50種のオオバギ属について植物標本庫の乾燥標本の観察を行い、小苞葉の形態が『蜜腺型』(小苞葉上に円盤状の腺をもつ)、『被覆型』(小苞葉が花を覆う)、『欠損型』(目立つ小苞葉をもたない)の3タイプがあることを明らかにした。この花序形態の差異は、送粉様式の違いを反映していると思われる。次に、分子系統樹にもとづいた最節約形質復元を行った。その結果、オオバギ属の祖先形質は欠損型であると推定され、その後順序は不明だが、蜜腺型と被覆型が起源し、3つのタイプ間で花序形態のシフトが少なくとも16回起こったことが示唆された。アザミウマ媒やカメムシ媒の種は単系統にならなかったこと、それらが含まれる被覆型は少なくとも4回進化していることから、このような特殊な送粉様式がオオバギ属内で複数回起源したことが示唆された。どのような生態的・遺伝的要因で送粉様式のシフトが起こったかは、今後の課題である。


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