| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-128 (Poster presentation)

植物間コミュニケーションと血縁認識-セイタカアワダチソウにおいて-

*塩尻かおり(京大・白眉),石崎智美(新潟大・理),安東義乃(北大・演習林)

植物は何らかの傷を負うと匂いを放出する。その匂いは、誘導性揮発性物質と呼ばれ、これまでに様々な機能を有することが報告されている。その一つに、隣接する植物がその匂いを受容すると健全であるにも関わらず、誘導反応を引き起こし害虫に対しての抵抗性を高めることが知られている。この現象は植物間コミュニケーションと呼ばれ、これまでに10種以上の植物で確認されている。

縁者らは、野生のセージブラシ(Artemisia tridentate)を用いて、植物間コミュニケーションの研究を行ってきており、同一遺伝子個体の匂いを受容した場合に、もっとも抵抗性を高く誘導すること、また、放出される匂い類似度と血縁度の間に正の相関関係があることを明らかにしてきた。さらに、セージブラシは血縁の近い個体を匂いで認識できることを明らかにした。

他の植物でも匂いで血縁認識できるかどうかを明らかにするため、演者らはセイタカアワダチソウを用いて実験を行った。セイタカアワダチソウ(Solidago altissima)の滋賀個体群から、遺伝子型の異なる5つのラインを採集し、遺伝的距離と匂い類似度の関係を調査した。その結果、遺伝的距離が近いほど、匂い類似度が高いことが明らかになった。さらに、野外操作実験において、血縁度の組み合わせの違いによる植物間コミュニケーションの強さの違いを調べたところ、匂い類似度が高い、すなわち血縁度が高い組み合わせほど、匂い受容個体の被害率が低いことが明らかになり、セイタカアワダチソウにおいても、匂いで血縁認識できることが示唆された。

植物が血縁認識するというこれらの結果は、植物間コミュニケーションの適応的意義を解明する一つの重要な手がかりであると考えられる。


日本生態学会