| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-137 (Poster presentation)

血糖値メーターを用いた微量花蜜のオンサイト定量法

高倉耕一(大阪市環科研)

近年、いくつかの植物において、種間送粉を介した近縁種との種間送粉が繁殖成功度を低下させる現象、すなわち繁殖干渉が、在来種の衰退や生態の変化に大きくかかわっていることが知られるようになってきた。そのような繁殖干渉にさらされたた場合、外交配(他家受粉)と内交配(自家受粉)の両方の繁殖戦略を自由に選ぶことができる植物種であれば、近縁外来種の存在下で内交配への依存度を増やすような反応が選択されるかもしれない。

外来雑草ヒメオドリコソウの存在が近年な在来雑草のホトケノザの繁殖戦略を変えているかもしれないことは、野外におけるヒメオドリコソウの分布とホトケノザにおける閉鎖花の発現率の関係から強く示唆されていた。また、ヒメオドリコソウが侵入した地域においては、ホトケノザの閉鎖化の発現率が高くなることも、両種の間に繁殖をめぐる何らかの相互作用が存在することを示唆している。もしかすると、外来種が侵入した地域のホトケノザについては、開放花についても花蜜の質が低下し、外交配への依存を低下させているかもしれない。この仮説を検証するため、花蜜の量と質を測定する手法を検討した。

最近の研究では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、総糖濃度だけでなく糖組成の定量が行われることが多い。しかし、この方法はサンプルを実験室に持ち込んで測定する必要があり、実験室に持ち帰るまでの分解・変質を防ぐために冷凍状態でのサンプル保管・運搬が必要になるなど、実際の野外調査ではやや敷居が高いのも現実である。

今回の講演では、ホトケノザの閉鎖化率がヒメオドリコソウの侵入・存在に大きく影響されていることを示したうえで、ホトケノザの花蜜濃度の測定にポータブル血糖値メーターが利用可能かどうか、HPCLでの測定と比較しつつ検討した結果を紹介する。


日本生態学会