| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-139 (Poster presentation)

異なる送粉者相に対応したタカクマヒキオコシ群(シソ科)の花筒長変異と遺伝的変異

星野佑介,荻嶋美帆,堂囿いくみ*(学芸大・教育・生物),山城考(徳島大・総合科学),牧雅之(東北大・植物園)

タカクマヒキオコシは筒状の花の長さに地理的な変異が見られる(4-12mm)。送粉者は、山地性で(800-1500m)短舌のミヤママルハナバチ、低地から低山地(100-1200m) に生息する長舌のトラマルハナバチである。花筒長変異が、送粉者の口吻長と対応し送粉効率がよくなることで維持されていると予想し、標高の異なる側所的な集団において、花筒長の変異がもたらされるメカニズムを明らかにすることを目的とした。調査は兵庫県氷ノ山周辺の標高の異なる集団(2012 年、2013 年各9 集団)を対象に、①各集団の花筒長、②マルハナバチの訪花頻度、③マルハナバチ一回訪花時の柱頭付着花粉数・種子生産量、④自然状態の柱頭付着花粉数・種子生産量を測定した。集団間の花筒長変異は、標高が高くなるほど短くなる傾向が見られた。トラマルハナバチはすべての集団で観察されたが、ミヤママルハナバチは標高800m以上の7集団のうち4 集団でのみでみられ、2 年間観察されたのは1 集団だった。トラマルハナバチ一回訪花時の柱頭付着花粉数・結実数は、低標高・長花筒集団の一部において、花筒の長い個体ほど付着数・結実数が高くなる方向性選択が検出された。しかし、低標高集団で逆の方向性選択が検出されたところもあった。自然状態での柱頭付着花粉数・結果数は、高標高の短花筒集団の一部において、花筒が短くなると付着量・果実数が多くなっていたが、高標高の集団全てで同様の傾向が見られるわけではなかった。以上の結果より、花筒長と送粉者の口吻長の対応が必ずしも送粉効率を高めるとは限らず、集団毎の選択圧のかかり方は様々であった。さらに、集団の遺伝的変異についても議論する。


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