| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-144 (Poster presentation)

サネカズラ(マツブサ科)に訪花するタマバエの系統地理

*三宅 崇(岐阜大・教育), 高田 晃成(岐阜大院・教育)

現生被子植物の中で最基部に位置するANITA植物群の中で、マツブサ科植物の数種でのみ特定のタマバエによる送粉が報告されている。日本でも、サネカズラKadsura japonicaと マツブサSchisandra repandaにはそれぞれタマバエが訪花し送粉している。中国のKadsura longipedunculataを送粉するタマバエとしてResseliella kadsuraeというタマバエが報告されている。しかし、サネカズラやマツブサを送粉するタマバエは花に産卵する点でR. kadsuraeと異なる。さらに、少なくともサネカズラでは、花で孵化した後羽化に至ることから、絶対送粉共生系を構築していると思われる。そこで、サネカズラを送粉するタマバエの種同定のための基礎的情報を得るため、国内の数地点(岡山県岡山市・倉敷市、京都府舞鶴市、岐阜県岐阜市・山県市、静岡県伊東市・沼津市)からサネカズラを訪花しているタマバエを採集し、分子系統推定を行った。夜〜朝にかけて訪花しているタマバエ成虫を採集すると共に、昼間には花に産卵された卵を採集した。合計で約100個体からDNAを抽出し、ミトコンドリアCOI領域の塩基配列を決定し、R. kadsuraeを含むResseliella属と比較した。その結果サネカズラを訪花しているタマバエは3つのクラスター(R1, R2, R3)に分けられた。R1は静岡県と岐阜県の個体を含み、R2はほぼ全ての集団の個体を含む一方、R3は静岡県の個体のみを含んでいた。 従って、サネカズラでは、複数種のResseliella属タマバエが送粉共生している可能性があり、さらに地理的に訪花種構成が異なることが示唆される。


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