| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-157 (Poster presentation)

春日山のモミ,シイ・カシ林分における外生菌根群集

*和中愛由,松田陽介(三重大院・生資),菊地淳一(奈教大)

外生菌根菌は,温帯の森林の主要な構成樹種と菌根共生を行い,栄養獲得を通した森林生態系の物質循環に重要な役割を果たす.二次林における外生菌根菌の群集構造の調査は多く行われているが,原生林のものは少ない.奈良県北部に位置する春日山は,春日大社の神域として1200年間ほとんど人の手が入らなかったため原生林が残っており,モミやイチイガシ,ウラジロガシなど外生菌根性樹種の大木が多く分布している.これまでに,春日山原生林の外生菌根菌の種多様性は非常に高いことが子実体発生や外生菌根の調査にもとづき示唆されているが,林分内の外生菌根菌がどのように分布しているかは明らかになっていない.そこで本研究では,春日山原生林の植生を代表すると考えられる,モミとシイ・カシが混交する林分から外生菌根を採取し,外生菌根菌の群集構造を明らかにすることを目的とした.林内に設置した1 haのプロット内から,20 m間隔で合計50個の土壌コアを100 mlずつ採取した.土壌から樹木根系を取り出し実体顕微鏡下で菌根を観察し,計数した.各コアから採取された外生菌根からランダムに40根端を選びDNAを抽出後,菌特異的なプライマーでITS領域をPCR増幅してからそれらの配列をシーケンサーで読み取った.得られた配列を97%の相同性でクラスタリングしたものを1MOTUとして扱った.その結果,外生菌根は土壌コア1つあたり,平均195根端見られた.コアごとの根端数は0~629根端と大きくばらついていた.1つの土壌コア中では,1MOTUによる外生菌根が優占する一方で,少数しか検出されない多様なMOTUも見られた.今後,コア間で出現するMOTUの分類属性も踏まえて解析を行い,林分内の外生菌根菌の群集構造とその生息ニッチ特性を議論したい.


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