| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-159 (Poster presentation)

房総半島における過去130年の土地利用変化

*岩崎亘典((独)農環研), デイビッド・スプレイグ((独)農環研), 寺元郁博((独)農研機構・近中四農研), 藤田直子(九州大学)

かつて日本国内には広大な草地が存在し,伝統的な農業活動や農村生活と深い関わりを持って維持されていたが,そのほとんどが消失している。これらの草地は,我が国特有の生物多様性を特徴付けるものであり,その分布と増減を把握することは,歴史的生物多様性評価にあたって重要な課題である。そこで本研究ではこの草地の面積に着目し,房総半島南部の明治時代初期からが現在までの,約130年間の土地利用変化を明らかにすることとした。

明治時代初期の土地利用については,迅速測図を元データとし,QGISのAPIを利用して独自に開発したアプリケーションを利用して,100m間隔の点データとして作製した。現在の土地利用は,1976年および2009年の国土数値情報を用い,1/10メッシュ(約100m)のグリッドデータとして構築した。

その結果,草地や荒地は明治時代初期には約21%を占めたが,1976年と2009年にはそれぞれ約2%と急激に減少した。樹林地は,明治時代には41%ほどであったが,現在や約58%と増加した。水田は全期間を通して20%前後と大きな変動が見られなかったが,畑地は明治時代初期には10%程度あったのが,現在は約5%と半分に減少した。

以上のように,対象地域で特徴的な土地利用変化は,草地の減少と樹林地の増加であった。このような土地利用変化は,草地棲・森林棲の動植物の増減や分布に,大きな影響を与えたと考えられる。


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