| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-190 (Poster presentation)

北海道東大雪の北方針葉樹林における13年間の樹木群集動態

*西村尚之(群馬大・社会情報), 原登志彦, 隅田明洋, 小野清美, 長谷川成明(北大・低温研), 加藤京子(NPOねおす), 鳥丸猛(弘前大・農学生命)

北方針葉樹林の更新機構を解明するために,北海道東大雪老齢林分に設置した面積2haの調査区内の樹高≥0.3mの幹を対象に2000年から13年間モニタリング調査を行った.本報告では,この期間中の4回の毎木調査から樹高≥0.5mの樹木の個体群動態と成長動態の結果を示した.調査は樹種,根元位置,樹高(地上高3mを限度),階層を記録し,樹高≥1.3mの幹の胸高周囲か直径を測定した.また,各調査時に5m×5mの各区画の林冠状態を記録し,2012年には調査区中央1ha部分の5mグリッド441交点で撮影した全天写真から林内光入射割合を推定した.2ha調査区の樹高≥0.5mの幹数は調査期間中4784-4926本で,トドマツの出現本数が最も多く(相対密度53%),ついでエゾマツ(31%),アカエゾマツ(9%)の順であった.林冠木の平均胸高直径はトドマツ38cmに対してアカエゾマツとエゾマツではいずれも53cmであった.2000-2004,2004-2008,2008-2013のどの期間の死亡率・新規加入率のどちらもアカエゾマツが最も低く,エゾマツが最も高かった.また,どの階層でもアカエゾマツの幹直径の相対成長速度は他種に比べて低く,エゾマツとトドマツの相対成長速度は下層と林冠層で順位が入れ替わる傾向があった.さらに,稚樹の成長に及ぼす光環境の影響はどの樹種でも明確に検出されなかった.以上から,個体密度が低いアカエゾマツのゆっくりとした更新動態特性はエゾマツやトドマツとは明らかに異なっており,北海道東大雪の北方針葉樹林における更新機構のひとつとして主要樹種の生活史特性の違いが重要であると推測された.


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