| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-203 (Poster presentation)

ヒノキ人工林における群状伐採が光環境と下層植生に及ぼす影響

*渡邉 仁志

ヒノキ一斉人工林には,壮齢以降の過密化に伴い下層植生が衰退し,表土流亡が発生しやすくなるという森林管理上の問題がある。下層植生は表土流亡の抑止に有効であるが,それらが一度衰退した林分では,通常の点状間伐によって回復しない事例も報告されている。本研究では群状伐採を行ったヒノキ人工林において,間伐が光環境と下層植生に及ぼす影響を検討するため,岐阜県東濃地域に設置した調査地において伐採6年後の状況を調査した。

調査地(3箇所)には,通常の点状間伐に加え立木を数本まとめて伐採することによって,林冠に比較的小さなギャップを設け,その中心から斜面の上下左右4方向に各30~36個の小方形区(1m2/個)を設置した。調査項目は各小方形区の傾斜,地表面の状態,および初期(間伐直後)の植被率,ササの有無,伐採6年後の植被率,相対散乱光(DIF)とした。

林床の平均DIFは,調査地1(本数間伐率:15.7%,ギャップ面積:6.7m2)<調査地2(23.0%,12.2m2)<調査地3(43.9%,23.0m2)の順に大きかった。調査地3では,ギャップの中心に近い小方形区ほどDIFが大きかったが,調査地1と調査地2ではその傾向はみられなかった。調査地2ではミヤコザサとスズタケが,調査地3では萌芽由来のシロモジなどが増加した一方,調査地1では植生回復が認められなかった。伐採6年後の植被率を応答変数,それ以外の項目を説明変数としたモデルによる解析の結果,初期の植被率,ササの存在,DIFが植生回復に対して正の効果を持っていた。これらから,群状伐採でギャップサイズを確保し,光環境を十分に改善することによって植生が回復する可能性があること,さらにササがある場合にはそれらが拡大することにより,その程度がより大きいことが示された。今後,植生回復に有効なギャップサイズや光環境を検討する必要がある。


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