| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-008 (Poster presentation)

カメノコハムシ亜科の分子系統と特異な外部形態の起源

*篠原忠(神戸大・人間発達環境),山城考(徳島大・総合科学),高見泰興(神戸大・人間発達環境)

昆虫は生物界の中でもきわめて種多様性が高く,その外部形態も多様である.昆虫の形態が進化するメカニズムを理解するためには,形態の変異に富んだ分類群を用いた進化解析が必要である.カメノコハムシ亜科(甲虫目:ハムシ科)は,背面が棘に覆われる種や体の周囲に扁平縁が張り出した種など,特異で多様な形態を持つ種を多く含む分類群である.本亜科の系統関係については,これまで形態または分子の情報に基づく系統解析により推定されてきたが,形態進化に関する詳細は明らかになっていない.

本研究では,より信頼性の高い系統関係を推定するため複数遺伝子座(ミトコンドリアDNA COI,COII,16Sおよび核DNA 28S)を用いて解析し,祖先形質復元および分岐年代推定を行った.76種について2060塩基対を最尤法とベイズ法により解析した結果,両樹形はほぼ一致した.最尤系統樹上に棘および扁平縁の形質を復元させた結果,棘は一度だけ起源し,前胸背板と上翅のみが棘で覆われるグループから触角にも棘を持つグループが派生していることが明らかになった.一方,扁平縁は複数の系統で平行進化しており,周囲を完全に覆う扁平縁は一度だけ起源し,頭部を覆わない不完全な扁平縁は少なくとも4回起源していることが明らかになった.COIと16Sの既知の進化速度に基づき分岐年代推定を行った結果,本亜科の起源は約8000万年前であり,棘の起源は5000万年前〜6000万年前,扁平縁の起源は約2000万年前と約6000万年前であることが明らかになった.本亜科では寄主転換による天敵や生活史の変化に伴い,外部形態が環境ごとに適応した可能性があると考え,このような多様化を生み出した要因についても議論した.


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