| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-012 (Poster presentation)

ツバメの雛の羽毛の赤色とチオレドキシン遺伝子の発現量の関係

新井絵美*(東北大・院・生命),長谷川克(総研大・先導),酒井祐輔,長太伸章,牧野能士,河田雅圭(東北大・院・生命)

鳥類は、セキツイ動物の中で、もっとも色彩豊かな仲間である。羽色の多様性を創出する機構の一つであるフェオメラニン色素は、動物において広く普及する色素で赤から栗色を呈する。フェオメラニン由来の羽色は、種内のコミュニケーションにも用いられ、個体の質を表す指標となる一方で、その合成や維持過程が生理的に有害であることが知られている。これは、フェオメラニンが活性酸素種の形成を促進すること、そしてフェオメラニン合成時のシステイン供給のために抗酸化物質を消費するためである。フェオメラニン色素を羽色に利用する鳥たちが、これらの酸化ストレスにどのように対抗しているかについて充分にわかっていない。そこで本研究では、システインを含み抗酸化作用を持つチオレドキシン遺伝子(TXN2)の発現が、酸化ストレス回避を介してフェオメラニン合成時の生理的な毒性を緩和しているという仮説をたて、ツバメにおいて検証した。ツバメはフェオメラニン由来の赤い喉を持ち、この喉の赤色の濃淡やサイズが異性を誘引する上で欠かせないことがわかっている。ツバメのひなの喉(淡い赤色)おいて、発達中の羽組織採取し、フェオメラニン合成の指標とされるSLC7A11遺伝子とチオレドキシン遺伝子の発現量の関係をRT-qPCRを用いて調べた。SLC7A11遺伝子は、システインのメラノサイトへの運搬を通して、フェオメラニン合成に関係する。その結果、SLC7A11遺伝子の発現量とチオレドキシン遺伝子の発現量の間に正の相関関係が検出された(R = 0.94, N = 9, P = 0.0001)。この結果は、チオレドキシン遺伝子がフェオメラニン合成に関係している事を示唆する。


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