| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-036 (Poster presentation)

都市近郊林における水を溜めた樹洞内の生物群集の構造

*伴雄大郎,吉田智弘(東京農工大院・農)

広葉樹には水を貯めた樹洞が形成され、そこには落葉などのデトリタスを資源とする食物網が存在する。樹洞はパッチ状の生息地であり、そのサイズや、内部の資源量が生物群集に影響をおよぼすことが知られている。本研究では、樹洞外部からの水やリターの資源供給が、生物群集にどの程度影響を与えているのかを明らかにするため、資源供給を制限した実験を行った。

東京都八王子市の広葉樹二次林において、2013年の5月から12月にかけて、樹洞を模した人工容器による野外実験を行った。 資源供給のパターンは、無制限(コントロール)、リター制限、水・リター制限の3つを設定した。各処理区で14個ずつ計42個をコナラ成木に固定し、約7週間設置する実験を4期間繰り返した。採取したサンプル内の水生生物を目視によって形態種で区分した。

本調査の結果、生物の総個体数や総出現分類群数は、無制限区に対してリター制限区や水・リター制限区で少なくなる傾向があった。また、結果からキンパラナガハシカはリターの供給制限によって個体数が少なくなると考えられた。一方で、ヤブカ属は水の供給制限によって出現頻度が低下することが示唆され、各生物にとって重要な資源は同一ではないと推測された。資源供給が生物におよぼす影響は、単純にその量のみでなく、資源の種類も関係しており、野外において資源供給に様々な差異があることで、水を貯めた樹洞の生物群集の構造が多様になっていると考えられた。


日本生態学会