| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-039 (Poster presentation)

里山林の人為的管理による空間的異質性がチョウ類の群集構造に与える影響

*村上健(東大院・農),大久保悟(東大院・農),大黒俊哉(東大院・農),武内和彦(東大院・農)

里山林では遷移段階の異なる植生が構成され、生物の多様性が維持されている。特にチョウ群集を用いた研究は盛んに行われており、里山管理と種多様性との関係が明らかになってきた。しかし、里山林の伝統的な管理である下草刈りや植林、落ち葉掻きなどに起因する植生構造の異質性に着目した研究は少なく、保全の際の具体的な指針を明示する必要がある。本研究では、各施業による様々な植生構造とそこに生息するチョウ類群集との関係を明らかにし、生物多様性を考慮した里山の適切な保全手法を検討した。

調査は埼玉県狭山市の雑木林で行った。対象地の林分を施業別に「伐開地」「下刈処理区」「コナラ低木林」「アカマツ低木林」「管理放棄林」の5種類に分類した。チョウ類はルートセンサス法に基づき判別し、種名、位置を記録した。またセンサスのルートに沿いコドラートを101ヵ所設置し、樹木の樹冠率・樹種・胸高直径、低木高さ・被度・優占種、草本高さ・被度・優占種をそれぞれ計測した。解析は多重比較検定と一般化線形モデル(GLMM)及びAICに基づくモデル選択によって各変数の効果を評価した。

調査の結果、伐採、低木植栽、下刈処理といった伝統的な里山林管理がチョウの多様性を高めていることがわかった。「コナラ低木林」では、森林性、草原性チョウ双方の生息地として機能していることが示された。また植生構造の異質性がチョウの群集動態に影響を与えていた。特に胸高直径と樹木密度が予測モデル変数として選択され、季節により異なる効果を示した。このことから、伐採周期や林床管理がチョウ群集にとって重要な環境要因であることが示唆された。


日本生態学会