| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-040 (Poster presentation)

景観構造と農法が水田における造網性クモ類と昆虫群集に与える影響

*福島友滉,宮下直(東大・農・生物多様性)

農薬や化学肥料の使用量を減らした環境保全型農法(以下「環保農法」)が広まるにつれ,その生物多様性に対する効果の大きさが決定されるプロセスに注目が集まっている.この効果は多くの場合, 象徴種などの限られた生物種を対象に,その種数や個体数を環保農法と慣行農法間で比較することで評価されてきた.しかし,ある種の個体数は捕食被食関係などの種間相互作用や,周囲の景観構造に影響を受けているはずであり,これらを考慮して農法間の比較をしなければならない.水田の普遍的な捕食者である造網性クモ類は,イネ害虫の天敵として機能することが期待されており,また水田で特に多いユスリカ類は,造網性クモ類の個体群維持において重要であると考えられている.これらの個体数は農法や水田内の局所環境に加え周辺景観から影響を受けることが分かっているため,環保農法の効果を検証するのに適している.そこで本研究では,造網性クモ類,イネ害虫,ユスリカ類,農法,局所環境および周辺の景観構造の関係を検証した.調査は新潟県佐渡市において,2013年6月と8月に環保農法と慣行農法の水田を1枚ずつセットにした14か所で行った.造網性クモ類とイネ害虫はスイーピング,ユスリカ類は粘着トラップで採集し,個体数を計測した.局所環境はイネの形質と畦の植生を,景観構造は各調査水田から半径500m内に含まれる水田・森林などの面積率と,各景観の多様度指数を使用した.解析では,各対象生物の個体数を目的変数,各景観要因と局所要因を説明変数,調査地をランダム変数としたGLMMの結果を基に,AICに基づく総当たりのモデル選択を行った.本研究では環保農法を実施している農家に対し,農法の効果の認知度を把握する目的でアンケートを行ったため,その結果も付せて報告する.


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